一ノ瀬ポトフの生活

趣味で書いたエッセイ的小話を順次アップしていきます

成人式のメイドカフェ

これから2、3週にいっぺんの休日更新になります。

 

成人式のメイドカフェ

 

成人式は、出ようかどうか迷った末、行くことにした。

行かないなら行かないで後悔しそうだと思ったから、が決め手だが、地元の同級生は会いたい人ばかりじゃない。

むしろ会いたくない方が多いくらいだ。

 

だから、早く抜け出す言い訳が欲しくなり、永らく行ってみたかったメイドカフェに行くことにした。

 

そのカフェは、ビルの一室にあり、私以外は男性客しかいなかった。

「おかえりなさいませ、お嬢様!」

お嬢様呼びなんて初めての経験だったが、悪くない響きだ。

 

カフェに行く計画を立てた時点で、私の服装は振り袖ではなく私服。
でも、式で苦手な人に会うせめてもの武装としてフルで化粧していた。


当時の時点で化粧はほぼ未経験だったから町の美容院でやってもらっていたのだが、ラフな私服にしっかりメイクがアンバランスで顔が浮いていた。

 

気恥ずかしさを覚えつつ、確かサワー系の何かを注文。

「お待たせいたしました」

私が成人式の日も、同じ歳くらいの女の子が働いている…

メイドさんの目を見た時、彼女達の正確な年齢は分からないけどそう思った。

 

ここに来るまでメイドカフェは夢の世界だと思ってた。メイドさんも料理も、現実感のないものだと。

思いの外メイドさんが生身の人間に見える。緊張してきて変な汗。

歳の近い女の子なんだと思うと不格好なメイクがより恥ずかしい。

 

せっかくなのでオムライスも注文する。「〜ちゃん成人おめでとう」と名前入りで書いてもらった。ケチャップの太字でも歪まない達筆である。味は美味しい。

 

手作りオムライスの文字通り、裏で作っているところを想像する。妖精さんじゃなく、リアルの人間で。

 

その後、珍しい「お嬢様」客だったのもあり、常連さんに話しかけてもらったりした。ぎこちなく、メイドさんとも少し話した。

こちらの緊張を察してか、優しく、明るく、笑顔が可愛かった。

「いってらっしゃいませ。」

帰りも優しく送り出される。

 

カフェを出ると、涙が出てくる。

地元であまり友達を作れず、お金を払って受け取っている人の温かみが途端に切なくなった。

 

ハタチにもなるのに、精神的に大人になれず、人も苦手なまま…地元に馴染めず登校拒否をしたあの頃と何が変わったというのだろう…

ボロボロ泣けば、みっともないマスカラが剥がれた。

もう成人、その事実がただただ私を追い詰める。

 

帰ってからも祖母と電話してる時に泣いた。

その時は、大人になれてよかったとか、育ててくれてありがとうとかじゃなく、「なってしまった」という気持ちが強かった。

 

忘れられない、ハタチの思い出。