一ノ瀬ポトフの生活

趣味で書いたエッセイ的小話を順次アップしていきます

初陣、失敗面接

大学時代、就活をしていた。そこでの初面接が、とてもひどい出来だったので、ここで供養しようと思う。

 

とにかく唐突に予定が立ち、極最低限の準備で臨んだ覚えがある。

 

当日は5人1組で、質問をされたら挙手で回答する形式、業種はブライダルだった。

 

 

「最近、幸せだった事はなんですか?」

 

長所や短所、入社して何をやりたいか等の話を予想していた私は想定外の質問に面食らった。しかしこれは挙手回答制。早く手を挙げなければ、マイナスイメージになってしまうかもしれぬ。

 

「彼女と久しぶりに会ったことです」

「友達と遊んだこと!」

 

次々に他のメンバーは答えている。気が急って、私も手を挙げる。

 

「どうぞ」

「少し前に、恩師のお別れ会があったんですけど…」

 

あ、と、思った。しかしもう引き返せなかった。

 

「もちろん、彼の事は悲しかったんですけど、そこで何年かぶりか分からない先生も教え子もみんな集合して、すごく久しぶりにその人たちに会えたことです」

 

…よりにもよって、冠婚葬祭の「葬」の話をしてしまった。実際、彼の訃報は悲しかったし、彼の死と共に小学校からお世話になっていた教室も閉まることになったから、その寂しさもあった。

しかし、そんな中でも、「もう二度と会う事はないと思っていた」人たちに再会出来たのは嬉しかった。

それでも、だいぶ、「幸せ」テーマで、「婚」の職種の面接でする話としては如何なものか。焦っていたとはいえ…後悔の波が押し寄せた。

 

過ちはここで終わってくれればよかったが、そうは問屋が卸さなかった。

 

「趣味について教えてください」

 

「妄想です。この人制汗剤何派だろうとか考えることです。」

 

…補足すると、私は化粧含め身だしなみに目覚めたのが遅かった。化粧を始めたあたりで、周囲の人も、それぞれ「マスカラしない派」とか、「どうしてもこのタイプのファンデーションが嫌い」とか、こだわりがあることを知る。制汗剤も、直接塗るタイプ、スプレータイプ、服に貼るタイプ、インナータイプ等色々ある。

 

そういった、持ち物の使い分けや細部のこだわりに、その人の色が出るような気がして、化粧品のレビューや口コミを読むのが好きだった。卒業制作も、「私のカバンの中身」をやろうと思っていたくらい。同じような理由で、エッセイを読むのも好きだ。

そういうことを言いたかったのだが…

 

言葉選びを思いきり間違えて、凄い変質者のような感じになってしまった。

 

静まり返る周囲…穴があったら入るどころか飛び込みたい気分だった。

 

後日、落ちたことをキャリア課の担当者に伝えると、「貴方、華がないものね!」と言われたが、明らかにそれ以前の問題である。何にせよ、落としてくれてよかったと思う。