数年前の八月、滝行に行った。人生で一回やってみたくて、時期的にもちょうどよかったので日帰り滝行の予約を取ったのであった。
ちなみに、修行の描写については不十分である。そこの所ご了承願いたい。
着いて早々、貴重品を預ける。財布は絶対で、ケータイは預けなくても良かった。(その場合自己責任)
どちらも当然預けるものだと思っていたので、スマホって皆さん使うんですか、と聞くと
「ああ、滝の写真を撮ったり、滝に打たれる人を撮ったりしていますね」
との事。ちょっと考えて私は預けることにした。
あと、修行に来た動機を聞かれる。
私は寺の荘厳な雰囲気に圧倒されていたし、担当者もピシッとしていて緊張感があった。
ゆえに、元々の「一回くらいやってみたかった」が動機では不十分な気がして、その時悩んでいる事を絡めて真剣に書いた。
修行には一切着いていけなかった。
午前中は教本に従って基本姿勢や挨拶の仕方を習ったが、発声が付くと姿勢が疎かになり、お線香のあげ方も間違える、一回で理解出来ず何度も聞き直す。そんな有様だった。
私は失敗する度に焦り、緊張していった。
(スパルタではなかったし、手順も毎回教えてもらいながらやる感じだった。この時の私は完全に気にし過ぎ。修行自体今日が初の、超素人であるというのに。)
そんな様子を見て担当者は、
「あなたは考えすぎるところがありますね。もっと力を抜いてやってもいいんですよ…今日のことも、きっかけになればいいんです。一日じゃ足りないでしょうし。」
そして心を落ち着かせる呼吸法などをやったが、届くことはなかった。
昼食も胃がいっぱいでなかなか食べ終わらず、後片付けの段取りも下手で、午後の集合に遅刻した。
他の修行者さんたちと合流する予定の大広間。もう説明が始まっている中、一人、時間がなくて修行着も半分しか着れていないような状態で駆け込んだ。
最高に居た堪れなく、「…消えたい!」と思った。
その後も教本を置き忘れたり、館内で迷子になったりと、散々であった。
ふざけてるわけでは決してないのに、とことん要領が悪かった。
そんなこんなで午後、滝行前の儀式をしていると、友達参加であろう、担当者の説明中に「ここってこうだっけ?」「えー?こうじゃね?」等笑いながら話す人の姿が…!
あと、全体の動きに遅れてもヘラヘラしている人も…!
(おい!修行だぞ!いいのかよ!)
(しっかりしなさいよ!遊びじゃないんだぞ!!)
気がつくとそれらに激しい苛立ちを覚えていた。
「修行だししっかりやらなくては」に囚われていた上、真剣にやっていたのに全くついていけなかったことで完全に心のゆとりを失っていた私。
ついに他者への寛容さまで失くし、観光気分の人に筋違いな怒りを向け始めたのである。
後編はこちら↓